みちしるべ
生きていくための力を育む教育
From 伊藤知之(弁護士・全珠連理事)
「法教育」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
法教育という言葉は、もともとは、アメリカ法教育法のLaw-Related Educationに由来する用語で、法や司法制度、これらの基礎となっている原理を理解し、法的な考え方を習得するための教育を意味します。
筑波大学の教育学者である江口勇治先生が日本に導入し、各地の弁護士会で取り組まれるようになりました。
その後、平成13年6月の司法制度改革審議会意見書に、学校教育等における司法に関する学習機会を充実させることが望まれるとされ、法務省を中心に、法教育推進協議会が発足し、教材の開発がなされました。
近年の主権者教育も法教育の中の一つです。
私はこれまで、弁護士会の法教育委員会から、小中学校、高校へ出向き、出張授業をする機会がありました。
法教育といっても、法律を教えるわけではありません。
人が他人とともに社会で生活する以上、さまざまな紛争に直面することは避けられません。
紛争を解決するための糸口となるのは、法やルールの背景にある目的や価値―自由、権利、正義、公平、責任等―であって、法教育とは、紛争に直面した際、適切に判断し解決するための力、生きていくための力を育むための機会を設けるものです。
中学校、高校では、刑事事件の模擬裁判、裁判員裁判の授業も行います。生徒に、検察官と弁護人という対立する立場を体験させ、立場の違いによって事実の捉え方が変わってくること、対立する意見の中から真実が発見されることを学んでもらいます。
最近、小学校からは、いじめに関する出張授業の申し込みが増えています。
いじめは人権侵害であり、たとえいじめの対象となる子に何か原因があったとしても、人権を侵害してはならないことを、できるだけわかりやすく話をしています。
法教育と珠算教育とは、分野が違いますが、どちらも、子供たちの生きていくための力を育む教育であることには変わりありません。
子供たちの未来のために、全珠連及び珠算教育の発展を祈念いたします。