みちしるべ
“数字”に強くなることが、科学力向上につながる
From 中野 靖彦(修文大学短期大学部教授・愛知教育大学名誉教授・全珠連理事・全珠連学術顧問)
最近、大学では情報やデータサイエンス系の学部で希望者が増え、文系でも数学を重視して入試に課している大学もあります。
英語は国際語であり、世界中で通用しますが、数学も国際共通語とも言われ、かつて、英語力の弱かった日本の留学生も、数学で頑張って多くを学び、活躍しました。
数学は多くの学びの基礎でもありますが、小学校高学年で“算数の壁”が乗り越えられない子どもも多くいます。
算数・数学を伸ばすには、計算の練習だけでなく、日常生活の中で“数字”に興味を持ち、強くなることのようです。
子どもたちは、お年玉で小遣いがどのくらい増えたか真剣に競い合いますし、買い物でも自分の財布を眺めて、欲しい菓子が買えるか暗算し、記憶します。
そのような日常生活での経験が数字への興味を高め、算数の学習に役立ってきたといいます。
しかしながら、キャッシュレスが主流では小銭が出回りません。子どもの財布も小銭でパンパンです。
発達心理学者のピアジェによると、2~7歳頃の子どもは言語や運動機能が発達し、ブロックを自動車に見立てたりして、盛んにイメージを働かせて遊びます。
右脳の方が発達も早く、記憶力も伸びます。
そして、成長とともに“外に出た脳”と言われる手や言葉を使うことによって左右の脳が働き、空間認知能力の獲得とともに論理的な思考が可能となります。
さらに、情報選択力や数の理解、読み書きがバランス良く成長し、多くの学びの“壁”に挑みます。
今、AI時代で、子どもたちも3歳頃からタブレットに親しみ、ゲーム感覚で計算や文字の学びもできます。
若者も、スマホ一つであらゆる情報が入手できますし、世界中の仲間とも交流できます。
確かに、便利であり、情報化社会への適応力を身に付けられますが、自分なりの学びの術も身に付ける必要があります。
子どもは毎日の生活の中で何かに興味を持つと集中しますし、もっと広く、深く知りたがります。
そのような無心ともいえる経験が、学ぶ意欲や好奇心、創造力を育て、将来の進路や職業選択に繋がる“後伸びする力”を育てるのです。
学びの基盤である算数・数学の力を向上させ、将来の科学力の発展には、小さい頃から“数字”に興味を持ち、数学に強く、広く知恵をつけた人材の養成が大切となります。