そろばん学習(珠算式暗算)右脳の活性化に関与
(公社)全国珠算教育連盟学術顧問 河野貴美子博士による「珠算式暗算による脳波変化の実験」をご紹介します。
実験について
今回の研究では、幼稚園の時からそろばんを学習していた児童を含め8歳以下、9・10歳、11歳以上の総計35名の初級、中級、上級の珠算レベルを持った児童を対象に選んでいる。
実験では、被験者ひとりひとりに16個の電極を取り付け、目を閉じて安静にしている時と、珠算式暗算を行っている時の二つの状態で脳波の動きをとらえた。
また、この実験を基に、珠算高位有段者の脳波の特徴を調べたことに基づいて「そろばん習熟過程における小学生を対象とする脳波変化」について研究論文を発表された。
結果
そろばん学習が集中力を高めるとの結果
年齢、級、段位別に調べてみると、安静時と比較したアルファ波のPower値(緊張度の指標)はそれほど大きく減少しないことがわかった。
暗算を行っている最中の集中度を示す後頭部から前頭部の間のアルファ波の位相差は級位より年齢との相互関係が高く、高学年になるほど課題に対する集中度が高かったことが認められる。
そろばん学習はイメージ思考とひらめきに有効
またベータ波は暗算中、高段者ほど左側前頭前部に小さく、右側後頭部に大きくなっている。フラクタル次元マップでみると、安静時から曲線次元がF2(電極位置を示す記号・前頭部中央)に高くなる傾向は、高位有段者に多くみられた。
このフラクタル次元の値そのものも年齢との相関がみられ、脳波のリズムを生み出す要素が年齢とともに変化していることが示されている。
珠算の段位があがるほどに右後頭部のイメージのみで計算し、集中力を示す指標にも一般の人に比べて高い数値が得られた。
河野貴美子先生は「一つのことに秀でると、右脳のイメージ力と集中力が高くなります。そろばんはイメージ思考とひらめき等にも有効です。」と語っておられた。
立教大学理学部物理学科卒業後、日本医科大学生理学教室助手。1985年より同大学基礎医学情報処理室(その後、情報科学センターに名称変更)所属を経て、現在、NPO法人国際総合研究機構副理事長、同 生体計測研究所副所長。その間、東邦大学理学部非常勤講師、戸田看護専門学校講師、東京都済生会看護専門学校講師を兼任。
国際生命情報科学会副会長、人体科学会副会長、催眠学会顧問、日本数学協会幹事、総合人間学会理事、全国珠算教育連盟学術顧問等、種々学会の役員を務めている。博士(工学)
著書に「脳に差がつくそろばんのすすめ」(ハート出版)「脳を鍛えるそろばんドリル」(日本文芸社)などがある。